ゼロの物語~ゼロの物語三部作
皆さんは「夢」という文字を読んで、どういったことを連想されますか?睡眠中に見た夢を思い出す方もあるでしょう。あるいは、日々の生活のなかで自分が目指しているゴールを連想する方もあるかもしれません。「夢」という文字はいろいろな意味を持ちますが、「夢」が見せてくれる世界は、不思議で、希望に満ち、恐怖を感じさせ、苦難に立ち向かい、愛に溢れるものです。そして「夢」から目覚めたとき、その世界の経験を振り返りながら、新しい「夢」との出会いを心待ちにします。
この『ゼロの物語』は、そんな「夢」の世界を描いた物語です。物語の登場人物たちが「夢」に向かって苦難に立ち向かう、SF冒険ファンタジーです。物語を読みながら不思議な世界を感じつつ、ハラハラドキドキして、主人公たちと一緒に冒険を楽しんでいただけたらと思います。そして読み終わったときに、物語の世界を振り返りながら、皆さんの現実世界の「夢」に向かう原動力としていただけることを願っています。
この物語は、語り手であるソラが見た明晰夢の世界が物語の舞台となっています。明晰夢というのは、夢の中で自分が夢を見ていることに気がつく夢です。その明晰夢でソラはゼロという女性と出会います。しかしそのゼロは、地球からはるか2,000万光年も離れた、エリュシオンという惑星の住人だったのです。
惑星エリュシオンは、進化の分岐点に立っていました。闇と光が交錯するなか、ソラはエリュシオンを光の世界に導くことに関わります。そしてそれは、地球での自分の人生に対して真剣に向き合うことでもあったのです。『ゼロの物語』というタイトルは、ソラがゼロと出会って始まった物語という意味があります。しかし、このタイトルにはもう一つ大切な意味があるのです。
一般的な物語の典型的な構成として、善と悪の戦いがあります。相反する二つの物が葛藤することで物語が進行します。もちろん、『ゼロの物語』も、そうした善と悪のせめぎ合いが重要なテーマとなっています。しかし善も悪も、人間が創り出した概念にしか過ぎません。現代の世界で悪と信じられていることが、過去の歴史では善であった時代もあります。個人的な事情で誰かの命を奪えば犯罪者です。しかし同時に、ボタンひとつで何百人の人間を殺した人が勲章をもらうこともあるのが人間社会です。
果たして絶対的な善や悪というものがあるのでしょうか?特定のことが善とされて一般的に知られると、そうでないことが悪になります。この二元化の世界は、常に相反するものを生み出します。時代が変わり社会が変化しても、新しく創造された善の概念は、同時に悪の概念を発生させます。何かが善であることは何かが悪であると言っているのと同じです。人間の集合意識は、そのような分類と分離にエネルギーを費やしています。そして悪という概念の存在は、それを実行する者を生じさせることになります。ポジは常にネガの裏返しであるのです。
悪の力に圧倒されそうになったエリュシオンで、登場人物たちは善の力で対抗しようとします。しかし、それは新たな悪を生む温床であることに気づきます。マイナスにプラスで対抗しようとすると、その針はどちらかに大きく振り戻すことになります。そのように限りなく続く悪を終焉させるのに必要なのは、「ゼロ」という意識であることに彼らは気づくのです。現代の仏教で「無」や「空性」と説明されている境地です。
『ゼロの物語』はこの「ゼロ」を目指して惑星を駆け抜けた、登場人物たちの冒険と葛藤を描いた物語です。そしてこれこそが、この物語のタイトル名の本当の意味です。登場人物たちがどのようにして「ゼロ」を見つけていったのか、物語を通じて知っていただけたら光栄です。
でも、難しいことは考えずに、気軽に読んでくださいね。惑星エリュシオンの世界をそのまま楽しんでいただけることは、登場人物たちが最も喜んでくれることだと思います。そして時々は夜空を見上げて、はるか遠い銀河に思いを馳せていただければ嬉しいなぁと思っています。
I~出会い~ ゼロの物語I~出会い~《改訂版》 |
II~7本の剣の守り手~ ゼロの物語II~7本の剣の守り手~《改訂版》 |
III~次元上昇~ ゼロの物語III~次元上昇~《改訂版》 |